こんにちは!薬局薬剤師2年目のごみちです。先日、このような質問を頂きました。
ごみちさん、ロキソプロフェンって授乳中って飲めますか?調べるものによってはダメだったり、大丈夫って書いてあってわからないです
私はよく『国立成育医療センター』か『妊娠と授乳』を使って投薬の可否を決めてるけど、もう一度しっかりと調べてみますね!
この質問が来てから、自分でももう一度しっかり調べないとな~と思ったので色々と調べてみました!画像も今回は作成してみたので、少しでも見やすくなればいいなと思います。。。!
目次
ロキソプロフェンについて
NSAIDsとは
ロキソプロフェンは、NSAIDsという分類の抗炎症・鎮痛・解熱薬です。NSAIDsとは「Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs」の略で、日本語にすると「非ステロイド性抗炎症薬」となります。
日本語訳の通り、抗炎症作用はあるけど非ステロイド性のものがNSAIDsです。このNSAIDsは色々な分類・作用があるのを薬学生・薬剤師の方は知っていると思います。
NSAIDsの作用は主に、アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害します。このCOXは、常時発現しているCOX-1と炎症が起こっている部位に誘導発現されるCOX-2があります。
常時発現しているCOX-1は、血小板凝集作用や胃粘液分泌増加などをしています。(これを阻害されるから抗血小板抑制や胃潰瘍の増悪などの副作用と繋がります。)
COX-2は誘導性であり、起炎・発痛物質であるプロスタグランジンE2を産生します。プロスタグランジン自体に発痛作用などはありませんが、炎症を増強させる作用があります。
このCOX-1,2の違いから、できる限りCOX-1を抑制せずCOX-2に選択的に作用する薬を使った方が副作用が少なく済むと考えられます。(COX-2選択阻害薬はセレコキシブ、エトドラク、メロキシカムの3剤)
おおよその作用機序は上の画像の通りです。
炎症細胞などから誘導発現されるCOX-2が、血管拡張や発熱などを起こすのでこのCOX-2を阻害・抑制することで消炎・鎮痛・解熱作用が期待できます。
ロキソプロフェンとは
ロキソプロフェンについて簡単に調べてみました!
現場でよく見るのは、テープ剤と錠剤ではないでしょうか。私はポンプスプレーがあるのを今回の記事を作成するときに初めて知りました。
COX-1、2非選択性のため、胃腸障害など起こるリスクはありますがプロドラッグ化されているため頻度は少ないようです。実際働いていても、レバミピドとの併用で処方が出ているときと単剤のみのときどちらも多く見かけます。
用法・用量
用法・用量も改めて調べてみました!
私に相談してくれた方が授乳婦に使用できるか?といった相談だったのと、日常でもよく触るのが内服錠なので内服錠に限定してまとめてみました。
整形領域で長期に渡る処方の際は、腎機能のことも考慮していった方が良いので高齢者で他科にかかっている患者さんからは血液検査の結果を聞いたりしています。
ロキソニン®の添付文書をみると、血中濃度についても記載がありました。
単回投与時
第一三共株式会社 ロキソニン錠添付文書
健康成人男性16例にロキソプロフェンナトリウム錠60㎎を単回経口投与したところ、速やかに吸収され、血中にはロキソプロフェン(未変化体)のほか、trans-OH体(活性代謝物)の型で存在した。最高血漿中濃度に到達する時間はロキソプロフェンで約30分、trans-OH体で約50分であり、半減期はいずれも約1時間15分であった。
大体30分くらいで効果が出ると思われます、と伝えることがあります。
注意することは?禁忌はあるの?
添付文書上での禁忌は以下の通りです。
- 消化性潰瘍のある患者
- 重篤な血液の異常がある患者
- 重篤な肝機能の異常がある患者
- 重篤な腎機能の異常がある患者
- 重篤な心機能不全がある患者
- 本剤の成分に対し過敏症の既往のある患者
- アスピリン喘息又はその既往歴のある患者
- 妊娠後期の女性
NSAIDsのCOX阻害を知っていると、ある程度のものは納得して禁忌になるのが理解できると思います。妊娠後期女性に対して禁忌なのは、『胎児動脈管収縮』が起こる可能性があるからです。
注意すべき点は、腎機能・肝機能・過敏症は特に注意した方が良いのかな、と思います。特に鎮痛剤を長期に渡って内服しているようであれば腎機能は定期的に追っていきたいところです。(薬局で腎機能追うの、難しくて困りますが)
また、他薬局・病院・市販薬での鎮痛剤の使用はあるか?を投薬時に聞いたり、お薬手帳を見る癖をつけた方がいいと思います。
過去に、潰瘍性大腸炎で市販のロキソニン®をよく飲んでいると言っていた患者さんがいらっしゃいました。COX非選択的なので、現病の増悪を起こしてしまうことがあるので市販薬はなるべく避けて、頻度は最低限に・購入の際はアセトアミノフェンを選ぶようにしてほしいとお伝えしたことがあります。
私の祖父の話になりますが、晩年まで力仕事をしていたため座薬の痛み止めがずっと冷蔵庫に保管されて今した。おそらく結構な頻度で使用していたと思います。
そんな祖父が大きな手術をする際、医師から『この状態での手術、腎機能が廃絶する可能性があります』と言われていました。鎮痛剤の高頻度使用と持病の生活習慣病が、術前後の抗菌剤投与に耐えきれるほどの腎機能を保持できなくなるリスクがあるというのを体感した例です。
どんな薬にも言えますが、薬同士との飲み合わせと既往をしっかりと聞き取りなどしていくことが大切だと思います。
妊婦・授乳婦に対してはどうなのか
まずは添付文書・IFをみる
添付文書を見ると、『ラットでは乳汁中移行性あり、授乳婦には有益性が上回る際に投与』とあります。これだと、『本当に投与していいの???』と心配になることがあると思います。
インタビューフォームも見てみると、『治療の有益性を考慮、授乳の継続・中止を検討。乳汁移行性は測定限界(0.02μg/mL)以下との報告がある』
授乳しながらもロキソプロフェンは飲めるのか、それとも中断させた方がいいのか若干微妙化も?
よく参考にしているのは
私の配属されている薬局は、産婦人科の処方が良く来るので『妊娠と授乳』という本が置いてあります。よく出るものはある程度覚えていますが、そうじゃない薬はこの本を利用して内服できるか?と調べます。
いろいろな薬が、薬効ごとに分けられていて見やすくておすすめです。
ネットが使える環境であれば、国立成育医療研究センターを利用しています。このサイト、患者さん本人が薬に関しても電話相談することが出来るので患者さんに紹介してもいいと思います。
また、日本産婦人科学会 産科 ガイドライン2020をみると中止検討をするのは抗悪性腫瘍薬・放射性ヨウ素などの治療目的の放射性物質・アミオダロンが対象になっていました。
また、RID(相対的乳児投与量)が10%をはるかに下回る場合は、児に影響は少ないと考えられるが10%を上回る場合は授乳中止検討するように、とありました。
結局飲める、と伝えていいの?
色々調べていくと、授乳婦に対してロキソプロフェンは投与可能であり授乳を中止指示しなくても良さそうであるということが分かります。
おそらく処方されている患者さんは、乳腺炎であったり出産時の手術後の痛みであったり飲まない方が心身ともに疲弊するような可能性があるので安心して薬物治療を行えるように患者さんに説明することも大切だと思います。
今日出ているお薬、乳汁に分泌されますがほんの微量で赤ちゃんに対して問題ない量です。痛みなど我慢せず、痛かったりしたら飲んで大丈夫ですからね。
患者さんへの伝え方は色々あると思いますが、私はよくこんな風にお伝えしています。我慢しなくていい・赤ちゃんには問題ない、これを伝えるだけで患者さんは安心した顔をしてくれることが多い気がします。
最後に
色々今回のロキソプロフェンについて調べさせて頂きました!できる限り現場で他の薬にも使えるようにと思ってもりもり調べたりしたら記事を完成させるのにずいぶんと時間がかかってしまいました、ごめんなさい。
自分でも「投与可能だけど、どれを根拠にした方がいいのか」等を改めて調べるとても良い機会になりました。特に日本産婦人科学会のガイドラインを見ることが出来たのはとてもよかったです!
この記事が少しでも読者のみなさまのお役に立てば幸いです!また、質問をくれた質問者さん、調べる機会をくれてありがとうございました!
2021.11.8 ごみち
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